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量子計算はどう動く?量子回路とShorのアルゴリズム|みやこでIT開催レポート

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量子計算はどう動く?量子回路とShorのアルゴリズム|みやこでIT開催レポート

量子計算とは、0と1の重ね合わせを扱う量子ビットに「量子ゲート」と呼ばれる操作を加え、量子の干渉を利用して、正解に対応する状態が測定されやすくなるようにする計算方法です。

ただし、量子コンピュータを使えば、すべての計算が速くなるわけではありません。問題の性質に合った量子アルゴリズムが存在して初めて、従来のコンピュータに対する優位性が生まれます。

2026年6月29日、みやこでITでは、連続講座「0と1を超える世界:量子コンピュータ入門」の第2回として、「量子計算はどう動いているのか」を開催しました。

講師は、大阪大学大学院理学研究科の大野木哲也氏です。

今回の講義では、量子状態を表す線形代数から、量子回路、量子ゲート、素因数分解を高速化するShorのアルゴリズムまで、量子計算の基本的な仕組みを段階的に学びました。

また、本シリーズでは、物理学者による講義だけでなく、お茶とヨガによるインターバルも取り入れています。頭だけで学び続けるのではなく、途中で身体を動かして集中を切り替える、みやこでITならではの構成です。

なお、第1回の様子は量子力学 × ヨガ — 量子力学入門 第1回 開催レポート、本編前に開いた数学の予習会は量子コンピュータのための数学入門で紹介しています。

開催概要

項目内容
開催日2026年6月29日(月)
シリーズ名0と1を超える世界:量子コンピュータ入門
今回のテーマ第2回「量子計算はどう動いているのか」
量子計算講師大野木哲也氏
所属大阪大学大学院理学研究科
ヨガ講師大野木由香氏
形式量子コンピュータ講義・お茶・ヨガ
主催みやこでIT
量子コンピュータ入門第2回で量子回路について講義する様子
量子コンピュータ入門第2回で量子回路について講義する様子

イベントの詳細は、connpassのイベントページをご覧ください。

講師紹介

今回登壇したお二人のプロフィールです。

大野木哲也氏 — クォンタム・フィールド・ジャパン理事。物理学者で、専門は格子ゲージ理論・量子力学・運動力学です。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の博士課程を修了し、京都大学基礎物理学研究所准教授および大阪大学大学院理学研究科教授を務めています。本イベントでは量子計算の講義を担当しました。 大野木由香氏 — クォンタム・フィールド・ジャパン代表理事。慶應義塾大学卒業。「ヨガびと・旅びと・着物びと」として活動しています。本イベントでは、講義の合間の初心者向けヨガを担当しました。

今回の講義で扱った内容

今回の講義は、主に次の3つのテーマで構成されました。

1. 量子力学と線形代数

2. 古典論理回路と量子論理回路

3. 素因数分解とShorのアルゴリズム

数式も登場する内容でしたが、一般的なコンピュータの論理回路と比較しながら、量子計算がどのような手順で行われるのかを整理しました。

量子状態はベクトルで表される

量子力学では、量子の状態をベクトルとして表します。量子状態を変化させる操作は、ベクトルに行列を掛ける計算として表現されます。

通常のコンピュータが0または1のどちらかを扱うのに対し、量子ビットは、0と1に対応する状態の重ね合わせを扱えます。

ただし、量子状態を測定すると、重ね合わせの状態をそのまま読み出せるわけではありません。測定結果として得られるのは、一定の確率で選ばれた一つの状態です。

この「計算中は重ね合わせを利用できるが、測定すると一つの結果になる」という性質が、量子アルゴリズムを設計する難しさにつながります。

古典論理回路と量子論理回路の違い

通常のコンピュータでは、0と1の信号に対して、AND、OR、NOT、XORなどの論理演算を行います。

量子コンピュータでも、量子ビットに対して演算を行う「量子ゲート」を組み合わせ、量子回路を構成します。

講義では、1量子ビットに作用するアダマールゲートと、2量子ビットの関係を操作するCNOTゲートが紹介されました。

実際の量子計算は、次のような流れで行われます。

1. 量子ビットの初期状態を準備する

2. 量子ゲートを順番に作用させる

3. 重ね合わせや量子もつれを作る

4. 必要な干渉を起こす

5. 最後に量子状態を測定する

量子回路は、複数の量子ゲートを順番に適用し、最終的な測定結果を得るための計算手順です。

「並列計算だから速い」だけではない

量子コンピュータは、多数の計算を同時に実行するだけで速くなるわけではありません。

重ね合わせによって複数の可能性を同時に扱えても、測定すると、その中から一つの状態しか得られないからです。

量子計算では、量子の干渉を利用し、正解に対応する状態の振幅を大きくし、不正解に対応する状態を打ち消す処理が重要になります。

つまり、量子コンピュータの速さを生み出しているのは、単純な並列処理ではありません。

重ね合わせ、量子もつれ、干渉を組み合わせ、正解が測定される確率を高める量子アルゴリズムが必要です。

Shorのアルゴリズムと素因数分解

Shorのアルゴリズムは、大きな整数の素因数分解を効率的に行うための量子アルゴリズムです。

素因数分解は、RSA暗号とも深く関係しています。RSA暗号は、大きな整数を素因数分解することが現実的な時間では難しいという性質を利用しています。

講義では、「21を3と7に分解する」という小さな例を使い、素因数分解の問題を、ある数の繰り返しの周期である「位数」を求める問題へ置き換える流れが説明されました。

Shorのアルゴリズムでは、次のような処理を行います。

1. 素因数分解したい整数を用意する

2. その整数と互いに素な数を選ぶ

3. 多数の候補を含む重ね合わせ状態を作る

4. 周期的な構造を持つ量子もつれ状態を作る

5. 量子フーリエ変換を行う

6. 測定結果から周期を推定する

7. 周期を使って元の整数の約数を求める

量子フーリエ変換によって波の干渉を起こし、周期に対応する測定結果が現れやすくなるよう処理することが、アルゴリズムの重要な部分です。

量子計算の本質は、正解を浮かび上がらせること

量子コンピュータは、単に多数の計算を同時に実行する機械ではありません。

量子計算では、まず多数の可能性を含んだ状態を作ります。その後、量子ゲート、量子もつれ、干渉を利用して、不正解に対応する状態を打ち消し、正解に対応する状態の振幅を大きくします。

最後に量子状態を測定し、正解を高い確率で取り出します。

この考え方は、Shorのアルゴリズムだけでなく、Groverの探索アルゴリズムなど、ほかの量子アルゴリズムにも共通しています。

講義の合間に、ヨガで身体を整える

今回のイベントでは、量子コンピュータの講義を続けて聞くだけでなく、講義の合間にお茶とヨガの時間を設けました。

量子コンピュータの講義の合間に行った初心者向けヨガ
量子コンピュータの講義の合間に行った初心者向けヨガ

ヨガを担当したのは、クォンタム・フィールド・ジャパン代表理事の大野木由香氏です。

ヨガ体験は初心者向けで、激しい運動を行うものではありません。普段着のまま、座った状態や立った状態でも参加しやすい内容です。

量子力学や量子計算では、普段あまり使わない概念や数式が登場します。そこで、講義に集中する時間と、身体を整える時間を交互に配置し、頭を切り替えながら後半の講義へ戻れる構成にしました。

ヨガと量子計算を科学的に直接結び付けることが目的ではありません。

難しい技術を頭だけで詰め込むのではなく、途中で身体を動かし、参加者が無理なく学び続けられる環境をつくることが、ヨガを取り入れた狙いです。

量子コンピュータについて注意したい3つの誤解

誤解1:すべての計算が速くなる

量子コンピュータが高速化できるのは、適した量子アルゴリズムが存在する問題です。

文書作成やWeb閲覧など、現在のコンピュータが行っているすべての処理が速くなるわけではありません。

誤解2:並列計算をするから速い

重ね合わせによって多数の候補を扱えても、そのまま測定すれば一つの結果しか得られません。

干渉によって、正解が現れやすい状態を作る処理が不可欠です。

誤解3:どのような問題にも利用できる

量子コンピュータの性能を生かすには、問題に適した量子アルゴリズムが必要です。

量子コンピュータが有効な問題の範囲を広げるため、現在も世界中で研究が続けられています。

今回のまとめ

今回の講義では、量子コンピュータの計算を支える次の要素を学びました。

  • 量子状態はベクトルとして表される
  • 量子ゲートは量子状態を変化させる操作である
  • 複数の量子ゲートを組み合わせて量子回路を作る
  • 重ね合わせだけでは答えを取り出せない
  • 量子もつれと干渉によって正解の測定確率を高める
  • Shorのアルゴリズムでは、素因数分解を周期を求める問題に置き換える
  • 量子コンピュータは、すべての問題を高速化するものではない

「量子コンピュータは何となく速い未来のコンピュータ」という理解から一歩進み、どのような計算手順によって量子の性質が利用されるのかを学ぶ機会となりました。

また、今回のイベントは、量子コンピュータについて知識を得るだけでなく、お茶やヨガを挟みながら、自分のペースで先端技術に向き合う機会でもありました。

専門的なテーマだからこそ、説明を一方的に聞くだけではなく、休憩や身体的なインターバルを含めて、学びやすい場を設計することも重要です。

次回は「現実の量子コンピュータ」

連続講座の第3回は、2026年7月27日(月)の「現実の量子コンピュータ」です。

理論上の量子計算が、実際の装置ではどのように実現されているのかを扱う予定です。

第3回の参加申込・詳細はconnpassのイベントページをご覧ください。これまでの開催の様子は量子力学入門 第1回 開催レポート、ほかの募集中イベントはみやこでITのイベント一覧からご確認いただけます。

みやこでITでは今後も、技術の内容だけでなく、人が無理なく参加し、考え、交流できる体験全体を大切にしたイベントを企画していきます。

よくある質問

量子コンピュータは、なぜ計算が速いのですか?

量子コンピュータは、0と1の重ね合わせを扱うだけでなく、量子の干渉を利用して、正解に対応する状態が測定される確率を高められます。ただし、高速化できるかどうかは、問題の種類と量子アルゴリズムによって異なります。

量子ビットとは何ですか?

量子ビットは、量子コンピュータで情報を扱う基本単位です。通常のビットが0または1のどちらかであるのに対し、量子ビットは0と1に対応する状態の重ね合わせを扱えます。

量子回路とは何ですか?

量子回路は、量子ビットに複数の量子ゲートを順番に作用させ、最後に測定結果を得るための計算手順です。

Shorのアルゴリズムとは何ですか?

Shorのアルゴリズムは、大きな整数の素因数分解を効率的に行うための量子アルゴリズムです。素因数分解の問題を周期を求める問題に変換し、量子フーリエ変換などを使って周期を推定します。

量子コンピュータは現在のパソコンを置き換えますか?

量子コンピュータは、現在のパソコンをすべて置き換えるものではありません。適切な量子アルゴリズムが存在する一部の問題で、従来のコンピュータとは異なる強みを発揮する計算機です。

なぜ講義の途中にヨガを行ったのですか?

今回のヨガは、量子計算との科学的な関連を示すためではありません。専門的な講義の途中で身体を動かし、姿勢や呼吸を整え、集中を切り替えるためのインターバルとして実施しました。

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