
生成AIを使えば、記事の下書きは速く作れます。一方で、過去記事の数字・会場名・役割・参加人数をそのまま再利用すると、事実の不一致がサイト全体へ広がります。この記事では、京都のITエンジニアコミュニティ「みやこでIT」のサイト運営を例に、CMSと生成AIの作業分担を整理します。対象は、イベント告知・開催報告・運営ポリシー・協賛情報を継続して更新している運営者です。
結論:AIは下書きまで、公開の判断は人、変動する数値はCMS
分担の結論を先に書きます。
- 生成AI:素材の整形と初稿まで。間違えても公開前に人が気づける作業だけを任せます
- 人:日付・会場・役割・人数・許諾・引用・帰属の確認。ここは自動化しません
- CMS:活動統計や運営者情報など、変わり続ける値の保管。記事本文へ複製しません
生成AIの価値は、公開を自動化することではありません。下書き・確認・公開の責任を分けて、運営記録を続けられる状態にすることです。
前提:「みやこでIT」のサイトはWordPressではありません
先に一次情報を開示します。miyakodeit.comはNext.jsで構築したサイトで、WordPressは使っていません。記事本文はリポジトリ内の単一のデータファイルにMarkdown文字列として保持し、ビルド時にHTMLへ変換しています。管理画面から投稿する構成ではありません。
そのうえで、この記事で扱う分担の考え方は、WordPressをはじめとする一般的なCMSでもそのまま使えます。違いは「どこへ置くか」であって、「誰が何を確認するか」は変わりません。CMSやプラットフォームの優劣を論じる記事ではありません。
生成AIへ任せている作業
任せているのは、次のような「素材を形にするまで」の作業です。
- 音声メモの整理(イベント直後の口頭メモを箇条書きへ)
- 見出し案の列挙
- 開催レポートの初稿
- SNS別の短文化(文字数と語調の調整)
- 過去記事からの関連記事候補の洗い出し
- 表記揺れの検出(「エンジニア」と「ITエンジニア」など)
- 更新期限の抽出(「2026年版」など、時点を含む記述の棚卸し)
共通点は、誤りがあっても公開前に人が気づけることです。逆に、誤りが人の目をすり抜けやすい作業は次の章で分けます。
人が必ず確認する項目
次の項目は、生成AIの出力をそのまま通しません。確認は人が行います。
| 確認項目 | 見落としたときに起きること |
|---|---|
| 開催日 | 告知と実績の日付が食い違う |
| 会場 | 会場提供先への事実誤認になる |
| 主催・共催・協力・登壇の区別 | 連携先の関与を実際より大きく(または小さく)書いてしまう |
| 参加人数 | 実績値の水増しになる |
| 写真の掲載許可 | 許諾のない人物写真が公開される |
| 発言の引用 | 言っていない発言が帰属される |
| 成果の帰属 | 他者の成果を自団体の成果として書いてしまう |
| 現在の統計 | 古い数字が新しい記事に載る |
| CTA | 終了したイベントへ誘導し続ける |
役割の区別は特に注意が必要です。「みやこでIT」では、連携先ごとに共催・会場提供・教育連携などの関係区分を分けて記録しています。生成AIは前後の文脈から「共催」を「主催」へ言い換えることがあります。役割の言い換えは相手先の信用に直接関わるため、必ず人が確認します。
成果の帰属も同じです。2023年4月のHACK+2023(NPO法人NEM技術普及推進会主催)で受賞したチームは、「みやこでIT」を通じた接点のあるメンバーで構成されています。受賞は主催者による評価であり、コミュニティ発のプロジェクトとしては扱わず、関係者による活動実績として記録しています。チーム形成の経緯はHACK+2023の記録に譲ります。この種の但し書きは、要約を任せると真っ先に消えます。詳しくはHACK+2023の記録と京都ITコミュニティ白書2026にまとめています。
変動する数値はCMS側で一元管理する
「みやこでIT」では、活動統計を定数ファイル1つへ集約し、全ページ・全記事・APIがそこを参照します。記事本文への数字の直書きは禁止しています。
運用は次のとおりです。
- 数値の一次ソースはconnpassの公開データで、週次ジョブがスナップショットを更新します
- 「公開イベント数」と「開催済み件数」を分けて保持します。公開イベント数には中止・開催前が含まれるため、実績を語る文では開催済み件数だけを使います
- 運営年数は発足日(2019年2月24日の第1回もくもく会)からの周年到達で計算します。固定値を書きません
この記事に出る数字も同じ定数から表示しています。現在は運営7年・開催済み153件・connpass登録メンバー623名で、これまでのコラボは14団体です。最新値と内訳は活動統計で公開しています。
CMS側で一元管理する情報は、統計だけではありません。
- 活動統計
- 運営者情報
- 問い合わせ先
- 行動規範
- 会場情報
- スポンサー情報
- 記事の更新日
これらを記事本文へ複製すると、更新のたびに全記事を直す必要が生じます。直し漏れは、そのまま事実の不一致として残ります。
更新が止まる原因は「書けないこと」ではありません
ここは当社の運用実感です。コミュニティサイトの更新が止まるとき、原因は文章を書く手間よりも、確認工程が属人化していることにあります。開催日と役割を確認できる人が1人しかいなければ、その人が忙しい週は公開が止まります。
生成AIを入れると初稿は速くなりますが、確認の詰まりは解消しません。むしろ初稿が増えるぶん、確認待ちの列が伸びます。分担を先に決めてから導入する順序を推奨します。
分担を試すときの手順(当社の運用目安)
次の手順は「みやこでIT」の運用目安であり、普遍的な正解ではありません。運営体制に合わせて調整してください。
1. 記事に出てくる変動値(統計・料金・会場・連絡先)を洗い出し、CMS側の一元管理へ移す
2. 「人が確認する項目」を、公開前チェックリストとして固定する
3. 生成AIへ渡す作業を、上のチェックリストに載っていない範囲へ限定する
4. 初稿と確認の担当を分け、確認できる人を2名以上にする
5. 公開後、時点を含む記述(「2026年版」など)の棚卸し日を決めておく
計測面の設計はコミュニティサイトをGA4でどう測るか、告知プラットフォームの選び方はconnpass・Doorkeeper・Meetupの使い分けガイドにそれぞれまとめています。
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