地方でITエンジニアコミュニティを7年運営してわかったこと — 京都149回開催から逆算する、再現可能なコミュニティ戦略
概要
- 7年間で約150回開催
- 累計参加者540名以上
- イベント開催頻度:月2〜3回
- 企業、自治体、団体との連携:12団体以上
本記事では、「地方でITコミュニティをどう立ち上げ、どう継続し、どう価値化するか」を、感想ではなく構造として整理します。
なぜ京都でITコミュニティを始めたのか(問題定義)
2019年当時の京都は、以下の状態でした。
- IT勉強会があまり存在しない
- ITエンジニア同士の接点が企業内に閉じている
- 東京や大阪との情報格差が明確に存在する
つまり、「人はいるが、接続されていない」状態でした。
この課題を解決するために必要だったのは、以下の3点です。
- プラットフォーム(場)
- 継続的な接触機会
- 心理的ハードルの低さ
"みやこでIT"は、この「接続インフラの不足」を埋めるために立ち上げました。
というとビジネス的な表現ですが、単純に「大阪に頻繁に出掛けるのが億劫になってきたから、京都にないなら作ってしまえ〜〜!」という感じで思い付きで始めました。
7年間の推移
Phase1:立ち上げ(2019)
- 月1回のもくもく会
- 夏頃から、「G検定合格講座」をシリーズで実施。これを機に大切な仲間たちと出会う。
- 仮説:ニーズはある!
Phase2:拡張(2020-2021)
- コロナ禍でオンライン化
- 京都外からの参加者が増加
- ハイブリッド開催開始
Phase3:差別化(2021-2023)
- 寺・町家での開催
- ブロックチェーン分野の取り組み
- 国際交流(韓国コミュニティ)
- HACK+最優秀賞
Phase4:制度化(2024-2025)
- KOINでの定期開催
- Netsujo事業として統合
- 企業連携の強化
地方コミュニティ運営の本質
1. 地方の不利は「密度」、強みは「文脈」です
地方は意味づけでPRする必要があります。お寺でのもくもく会が成立するのは、京都という文脈があるからです。
- 東京 → マッチング効率
- 地方 → 体験価値
2. 「ファン化」がすべてを決めます
地方は母数が少ないため、「新規を集め続けること」よりも「一度来た人に定着してもらうこと」の方が重要です。
言い換えると、重要なのは初回参加ではなく「2回目・3回目につなげる設計」です。
そのために、"みやこでIT"では以下を徹底しています。
- 参加費:無料〜1,000円(まず来てもらう)
- 一人参加歓迎を明記(心理的障壁を下げる)
- 主催者が最初に声をかける(孤立させない)
- 参加者同士を軽く接続する(関係性を生む)
- 途中参加・途中退出OK(負担を減らす)
- スキルレベル不問(排除しない)
重要なのは、「居心地がよかった」で終わらせないことです。「また来てもいい」「次は誰かを連れてきてもいい」と思わせる状態を意図的に作ります。
これはホスピタリティではなく、再現性のある設計です。
3. 継続は意思ではなく仕組みです
149回継続できた理由は気合ではありません。気分です。
「自分たちで運営したら面白そうじゃあないか」と思って始めたものが、期待通りに面白かった。だから、「来月はこんなことしようかな」と楽しみながら企画をして、参加者に楽しんでもらうことを自分たちが楽しんでいる状況がゆったりゆるく続けられてきた。
明確なKPIがないことと、開催することが義務ではないこともまた重要な要素です。
4. 連携しなければ規模は伸びません
単独運営には限界があります。会場・集客・信頼を突破するのが外部連携です。
実績として、佛現寺(お寺)、KOIN(京都経済センター)、京町家、元お茶屋、企業・自治体との連携があります。
連携すると、それぞれの企業や団体、場所を起点とした信用がヒトを連れてきてくれることになる。自分が頑張らなくても営業いただける関係を作ることが、無理なく続けられる要素でもあります。
5. もくもく会は初期解です
もくもく会は最終形ではありません。役割は以下です。
- 初期参加ハードルを下げる
- 母集団を作る
その後、交流会・ハッカソン・技術イベントへ展開することで、コミュニティは成長します。
コミュニティは3レイヤーで設計します
Layer1:接点 — もくもく会・無料イベント
Layer2:関係性 — 交流会・コラボイベント
Layer3:価値化 — 採用・受託開発・共同事業
この3つを接続しない限り、コミュニティは事業にはなりません。
現時点の課題(避けずに整理します)
- 地域企業ITエンジニアの巻き込みが弱い
- コミュニティから案件への導線が弱い
- 運営中核メンバーの分散が不十分(属人性が残っている)
地方でITコミュニティを始めたい人へ(現実ベースで整理します)
地方でITコミュニティを始めること自体は、そこまで難しくありません。本当に難しいのは、「最初の1回を開くこと」ではなく、「1年後も存在していること」です。
1. まずはconnpassなどで"存在"を作ります
最初にやるべきことは完璧な企画を作ることではありません。「この地域に、このテーマのコミュニティが存在する」と外から認識できる状態を作ることです。
重要なのは、イベント情報が継続的に見える場所を作ること。知名度がないことよりも、「やっているのか、やっていないのか分からない状態」の方が致命的です。
2. 会場は"安い場所"ではなく"続けられる場所"を選びます
地方では、会場がブランドになることがあります。いつもの場所があることで、参加者にとっての心理的な拠点になります。
会場選びで見るべきなのは、駅から無理なく来られるか、参加費を高くしなくて済むか、主催者が心理的に負担なく借り続けられるか、少人数でも成立するか、です。
3. 最初のイベントは、気合を入れず"もくもく会"で始めます
もくもく会はシンプルです。極論、場所と時間だけ決めれば成立します。母数が少なく新規流入が限られている地方では、この「負荷の低さ」が極めて重要です。
4. 最初の参加人数は気にしすぎないことが重要です
3人でもちゃんと会話があり、また来たいと思えるなら十分です。地方では1回の参加者数よりも、同じ人が2回、3回と来てくれるかの方がずっと重要です。
5. 月1回を"絶対に守る基準"として決めます
コミュニティにおける信頼とは、「内容の豪華さ」ではなく、「来月もやっているだろう」という予測可能性です。月1回でよいので、止めないこと。
6. SNS発信は"集客"のためだけにやるのではありません
参加を迷っている人は、いきなり申し込みをしません。過去の投稿を見て、「どんな人が来ているのか」「初心者でも大丈夫か」を見ています。SNSは宣伝媒体というより、信頼形成の装置です。
7. 本当に重要なのは、10回・30回・100回の壁を越えられるかです
10回続けると、ようやく「たまたまではない」と見なされます。30回続けると、地域の中で一定の存在として認識され始めます。100回を超える頃には、信用そのものが資産になります。
まとめ
地方コミュニティの本質は以下です。
- 人を集めるのではなく、関係性を設計する
- 継続するのではなく、再現性ある仕組みを作る
- 活動ではなく、事業資産に変換する
京都のお寺でコードを書くこと自体に本質的価値があるのではありません。それを構造として再現可能にすることに価値があります。
ぜひご相談ください
- 地方でITコミュニティを立ち上げたい
- 採用やブランディングに活用したい
- Web3、ITエンジニアコミュニティと連携したい
→ Netsujo株式会社までお問い合わせください。
関連リンク
"みやこでIT"のイベントに参加して、普段接することのない分野のエンジニアと 交流できたことが大きな刺激になりました。京都という場所柄、リラックスした 雰囲気の中で深い議論ができるのが魅力です。」
— イベント参加者
まとめ
"みやこでIT"は今後も京都を拠点に、エンジニアの交流と成長を促進する活動を 続けていきます。次回のイベントもお楽しみに!