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ITエンジニアコミュニティの運営方法 — 7年145回開催で学んだ継続の仕組み

2026-03-27
飯田 友広
飯田 友広
地方ITエンジニアコミュニティ京都もくもく会運営ノウハウTEMPLEモデル
ITエンジニアコミュニティの運営方法 — 7年145回開催で学んだ継続の仕組み

地方でITエンジニアコミュニティを始めて7年。145回開催し、メンバーは3人から553人になりました。

この記事では、その過程で何が効いて、何が効かなかったかを整理します。これから地方でコミュニティを立ち上げたい人、運営を続けている人の参考になれば幸いです。

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なぜ京都でITコミュニティを始めたのか

2019年当時の京都には、ITエンジニア同士が気軽に集まれる場がほぼありませんでした。

  • IT勉強会が少ない
  • エンジニア同士の接点が企業内に閉じている
  • 東京や大阪との情報格差がある

人はいるのに、接続されていない。この状態を変えるために必要だったのは、プラットフォーム(場)、継続的な接触機会、心理的ハードルの低さの3つでした。

正直に言えば、「大阪に出かけるのが億劫になってきたから、京都にないなら作ってしまえ」という軽い動機で始めています。

7年間の推移

Phase1:立ち上げ(2019)

  • 月1回のもくもく会
  • 夏頃から、「G検定合格講座」をシリーズで実施。これを機に大切な仲間たちと出会う。
  • 仮説:ニーズはある!
→ 検証フェーズでした。

Phase2:拡張(2020-2021)

  • コロナ禍でオンライン化
  • 京都外からの参加者が増加
  • ハイブリッド開催開始
→ 地理的制約が消えると参加者は増える?ことが分かりました。

Phase3:差別化(2021-2023)

  • 寺・町家での開催
  • ブロックチェーン分野の取り組み
  • 国際交流(韓国コミュニティ)
  • HACK+最優秀賞
→ 「場所 × 体験」による差別化が成立しました。

Phase4:制度化(2024-2025)

  • KOINでの定期開催
  • Netsujo事業として統合
  • 企業連携の強化
→ コミュニティの基盤を強化しました。

みやこでIT独自の「TEMPLEモデル」

7年145回の運営から見えてきたのは、地方コミュニティが継続するためには共通の構造があるという事実です。この構造を「TEMPLE(テンプル)モデル」という6つの柱で整理します。

TEMPLE は、Theme(テーマ)/Environment(環境)/Members(メンバー)/Persistence(継続)/Local(地元性)/Evolution(進化)の頭文字です。京都という場所で、お寺でコードを書くコミュニティを育てた経験から抽出した、再現可能なフレームワークです。

T — Theme(テーマ):地方の強みは「文脈」です

地方の不利は「密度」ですが、強みは「文脈」です。東京が持つマッチング効率は地方では再現できません。その代わりに地方は、土地が持つ文脈で意味づけできます。

  • 東京 → マッチング効率
  • 地方 → 体験価値

お寺でのもくもく会が成立するのは、京都という文脈があるからです。テーマを「その場所でしか生まれない意味」と結びつけられるかどうかで、コミュニティの価値が決まります。

E — Environment(環境):場所はブランドになります

地方では、会場そのものがコミュニティのブランドになります。「いつもの場所」があることで、参加者にとっての心理的な拠点ができ、次回参加の動機になります。

みやこでITの場合、佛現寺(お寺)・KOIN(京都経済センター)・京町家・元お茶屋という4種類の会場を使い分けてきました。お寺では集中、KOINでは交流、町家では少人数の濃い議論と、場所ごとの空気が参加者の体験を変えます。

会場を借りるときに見るべきなのは、駅からの距離・参加費を高くしなくて済むか・主催者が心理的に負担なく借り続けられるか・少人数でも成立するか、の4点です。

M — Members(メンバー):「ファン化」がすべてを決めます

地方は母数が少ないため、「新規を集め続けること」よりも「一度来た人に定着してもらうこと」の方が重要です。新規流入に依存する設計は、数ヶ月で息切れします。

重要なのは「2回目・3回目につなげる設計」です。そのために、"みやこでIT"では以下を徹底しています。

  • 参加費:無料〜1,000円(まず来てもらう)
  • 一人参加歓迎を明記(心理的障壁を下げる)
  • 主催者が最初に声をかける(孤立させない)
  • 参加者同士を軽く接続する(関係性を生む)
  • 途中参加・途中退出OK(負担を減らす)
  • スキルレベル不問(排除しない)

「居心地がよかった」で終わらせず、「また来てもいい」「次は誰かを連れてきてもいい」と感じてもらえる状態を意図的に作ります。これは再現性のある設計です。

P — Persistence(継続):気合ではなく仕組みで続けます

145回継続できた理由は気合ではありません。気分と仕組みの両立です。

「自分たちで運営したら面白そうだ」と考えて始めたことが、期待通りに面白かった。だから、「来月はこんなことしようかな」と楽しみながら企画して、参加者に楽しんでもらうことを自分たちが楽しめる状態をゆるく続けられています。

明確なKPIを置かないこと、開催することを義務にしないこと、この2つが継続の土台です。そのうえで、月1回を「絶対に守る基準」として決めます。コミュニティにおける信頼とは「来月もやっているだろう」という予測可能性です。月1回でよいので、止めない。10回・30回・100回の壁を越えると、信用そのものが資産になります。

L — Local(地元性):外部連携が規模拡大の鍵です

単独運営には限界があります。会場・集客・信頼の3つの壁を突破する手段こそ、外部連携です。

実績として、佛現寺(お寺)・KOIN(京都経済センター)・京町家・元お茶屋・企業・自治体との連携があります。連携すると、それぞれの企業や団体、場所を起点とした信用が人を連れてきてくれます。自分が頑張らなくても営業していただける関係を作ることが、無理なく続けるための要素でもあります。

地元性は、単に地名を名乗ることではありません。地域の中で「ここと組めば間違いがない」という信用を積み上げ、地域の文脈の中で受け取ってもらえる状態を作ることです。

E — Evolution(進化):もくもく会は初期解です

もくもく会は出発点であり、到達点ではありません。もくもく会の役割は以下の2つです。

  • 初期参加ハードルを下げる
  • 母集団を作る

その後、交流会・ハッカソン・技術イベント・産学連携・事業共同開発へと展開することで、コミュニティは成長します。"みやこでIT"は次の3レイヤーで進化を設計しています。

  • Layer1:接点 — もくもく会・無料イベント
  • Layer2:関係性 — 交流会・コラボイベント
  • Layer3:価値化 — 採用・受託開発・共同事業

この3つを接続しない限り、コミュニティは事業にはなりません。進化とは、この3レイヤーを行き来できる設計をあらかじめ入れておくことです。

現時点の課題(避けずに整理します)

  • 地域企業ITエンジニアの巻き込みが弱い
  • コミュニティから案件への導線が弱い
  • 運営中核メンバーの分散が不十分(属人性が残っている)

地方でITコミュニティを始めたい人へ(現実ベースで整理します)

地方でITコミュニティを始めること自体は、そこまで難しくありません。本当に難しいのは「1年後も存在していること」です。

1. まずはconnpassなどで"存在"を作ります

最初にやるべきことは完璧な企画を作ることではありません。「この地域に、このテーマのコミュニティが存在する」と外から認識できる状態を作ることです。

重要なのは、イベント情報が継続的に見える場所を作ること。知名度がないことよりも、「やっているのか、やっていないのか分からない状態」の方が致命的です。

2. 会場は"続けられる場所"を選びます

地方では、会場がブランドになることがあります。いつもの場所があることで、参加者にとっての心理的な拠点になります。

会場選びで見るべきなのは、駅から無理なく来られるか、参加費を高くしなくて済むか、主催者が心理的に負担なく借り続けられるか、少人数でも成立するか、です。

3. 最初のイベントは、気合を入れず"もくもく会"で始めます

もくもく会はシンプルです。極論、場所と時間だけ決めれば成立します。母数が少なく新規流入が限られている地方では、この「負荷の低さ」が極めて重要です。

4. 最初の参加人数は気にしすぎないことが重要です

3人でもちゃんと会話があり、また来たいと思えるなら十分です。地方では1回の参加者数よりも、同じ人が2回、3回と来てくれるかの方がずっと重要です。

5. 月1回を"絶対に守る基準"として決めます

コミュニティにおける信頼とは「来月もやっているだろう」という予測可能性です。月1回でよいので、止めないこと。

6. SNS発信は"信頼形成の装置"として活用します

参加を迷っている人は、いきなり申し込みをしません。過去の投稿を見て、「どんな人が来ているのか」「初心者でも大丈夫か」を見ています。SNSは宣伝媒体というより、信頼形成の装置です。

7. 本当に重要なのは、10回・30回・100回の壁を越えられるかです

10回続けると、ようやく「たまたまではない」と見なされます。30回続けると、地域の中で一定の存在として認識され始めます。100回を超える頃には、信用そのものが資産になります。

まとめ

地方コミュニティの本質は以下です。

  • 関係性を設計する
  • 再現性ある仕組みを作る
  • 活動を事業資産に変換する

京都のお寺でコードを書く体験の本質的価値は、それを構造として再現可能にするところにあります。

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