もくもく会は出発点であり、到達点ではない — コミュニティの3レイヤー進化論
もくもく会は、コミュニティを始めるための最も優れたフォーマットです。登壇者不要、資料不要、参加ハードルが低い。
ただし、もくもく会だけを何年も繰り返していると、「作業場所の提供」以上の価値が生まれにくくなります。
この記事では、もくもく会で始めたコミュニティを、交流会→ハッカソン→事業共創へと段階的に進化させる設計を、京都の8年148回の実践から整理します。これはTEMPLEモデルのうち、E — Evolution(進化) を深掘りした実践編です。
---
3レイヤーの進化モデル
みやこでITは、以下の3レイヤーでコミュニティの進化を設計しています。
Layer 1: 接点(もくもく会・無料イベント)
目的は「知り合うこと」。参加ハードルを限りなく下げ、母集団を作ります。
- もくもく会(月1〜2回)
- 無料参加枠
- 初参加歓迎
- スキル不問
ここが弱いと、その先のレイヤーが成立しません。逆に、ここだけ強くても「作業場所」で止まります。
Layer 2: 関係性(交流会・コラボイベント)
目的は「つながること」。もくもく会で隣に座った人と、もう一歩深い関係を作る場です。
- ITエンジニア交流会(LT + フリートーク)
- テーマ別勉強会(AI、Web3、WordPress 等)
- 読書感想共有会(オンライン)
- Brew & Build(ビール × 開発)
Layer 1 で顔見知りになった人同士が、ここで「何をしているか」「何に興味があるか」を知り合います。この段階で「今度一緒に何か作ろう」という話が自然に出ます。
Layer 3: 価値化(採用・受託開発・共同事業)
目的は「一緒に作ること」。コミュニティの関係性が、実際のプロジェクトに変わる段階です。
- ハッカソンでチームを組んで開発(HACK+2023最優秀賞)
- 交流会で出会った人からの仕事依頼
- 企業との共催を通じた採用接点
- 大学との産学連携プロジェクト
この3レイヤーを接続しない限り、コミュニティは事業にはなりません。
---
進化のタイミング
もくもく会 → 交流会(開催10回前後)
もくもく会を10回程度続けると、「いつも来る人」ができます。この段階で初めて交流会を開く意味が出ます。
最初からLT会やパネルディスカッションを企画しても、参加者同士の関係性がないため盛り上がりにくい。「顔見知りが5人以上いる状態」を先に作ることが重要です。
交流会 → ハッカソン(開催30回前後)
交流会を重ねると「一緒に作りたい」という声が出始めます。ここでハッカソンを企画します。
みやこでITでは、HACK+2023への参加がこの転換点でした。もくもく会で出会ったメンバー3名がチームを組み、月1回のもくもく会をそのまま開発ミーティングの場に使い、最優秀賞を受賞しました。
ハッカソン → 事業共創(開催100回前後)
ハッカソンの成功体験があると、「このコミュニティから仕事が生まれる」という認知が広がります。企業からの共催依頼、採用相談、技術顧問の依頼が自然に入ってくるようになります。
みやこでITは148回の時点で、京都府WGへの参画、複数の企業連携、大学との共同イベントが常態化しています。
---
進化を止める3つの罠
罠1: もくもく会に固執する
「もくもく会が好きだから、もくもく会だけでいい」は、コミュニティを作業場所に固定します。もくもく会は基本形として維持しつつ、交流会やLT会を月1回追加する。この「基本形 + 1」の設計が進化を生みます。
罠2: いきなりLayer 3を目指す
関係性ができる前に「このコミュニティから事業を作りたい」と焦ると、メンバーが引きます。Layer 1 → 2 → 3 の順番を飛ばさないことが重要です。
罠3: 全てを自分でやろうとする
進化のフェーズが上がるほど、運営の負荷は増えます。幹事の持ち回り、共催パートナーへの分担、参加者自身の自主企画——運営を分散させないと、主催者がボトルネックになります。
---
みやこでITの進化の軌跡
---
まとめ
もくもく会で接点を作り、交流会で関係性を育て、ハッカソンや事業共創で価値を生む。この3レイヤーを意図的に設計し、タイミングを見て次の段階に進める。進化とは、この3レイヤーを行き来できる設計をあらかじめ入れておくことです。
関連記事
- ITエンジニアコミュニティの運営方法 — TEMPLEモデル
- 地方コミュニティは「テーマ設計」で差が出る(TEMPLE-T)
- 会場がブランドになる(TEMPLE-E)
- 新規より「2回目」を設計する(TEMPLE-M)
- 月1回を「絶対に守る」だけでコミュニティは続く(TEMPLE-P)
- 地方コミュニティの外部連携戦略(TEMPLE-L)
詳細は代表紹介、お問い合わせはNetsujo株式会社まで。
関連記事
新規より「2回目」を設計する — コミュニティのファン化戦略
新しい人を呼び続けるコミュニティは疲弊する。京都で8年148回、558名のコミュニティを育てた経験から、一度来た人を定着させる「ファン化」の具体的な設計手法を整理。TEMPLEモデルのM(Members)実践編。
月1回を「絶対に守る」だけでコミュニティは続く — 継続の仕組み化
コミュニティが消える最大の理由は「主催者が疲れた」。KPIを置かない、義務にしない、楽しめる範囲で止めない。8年148回を続けた京都のコミュニティが実践する、継続のための仕組みを整理。TEMPLEモデルのP(Persistence)実践編。
地方コミュニティの外部連携戦略 — 企業・自治体・大学を巻き込む方法
単独運営には限界がある。会場・集客・信頼の3つの壁を突破するには外部連携が必須。京都で13以上の団体と連携してきた実践から、地方コミュニティが外部パートナーを獲得する具体的な方法を整理。TEMPLEモデルのL(Local)実践編。